和傘職人を訪ねて~後編
昔、和傘職人を訪ねたお話・・・前編はこちらです↓
1階は骨董屋さんみたいな雰囲気・・・誰もいない・・・。
「ごめんくださ~い」・・・シーン・・・
もう少し大きな声で、「ごめんくださ~い!」
すると奥から「はいはい」とおばあさんが出てきました。
「こちらは青梅傘を作っているところですか?」と尋ねると、
「そうですよ、ちょっと待っててね」と言い奥に引っ込んでいきました。
暫くするとおじいちゃんが現れました。
そう、会いたかったあのおじいちゃんが登場したのです。
うわぁ~とか、おぉ~とか、そんな気持ちでしたねw
おじいちゃんの「何ですか?」という問いかけに、私はそれまでのいきさつを話しました。
おじいちゃんは「うんうん」と頷きながら一通り聞いてくれた後、
「わたしは弟子をとりません」
とハッキリ言いました。
骨董屋さんのような雰囲気だった1階は、やはり骨董屋さんでした。
おじいちゃんは和傘職人をやりながら骨董屋さんを営んでいました。
おじいちゃんは、
このご時世和傘職人だけでは食べていけないこと
だから骨董屋さんをやっていること
食べていけない仕事だから弟子を取らないこと
青梅傘は自分で終わりにするつもりのこと
をお話してくれました。
「お嬢さん、まだお若いんだから、こんな仕事ではなく普通のOLさんにおなり」と言われました。
食い下がってみてもおじいちゃんは優しく諭すようにお話してくれました。
これまでにも何人も弟子入り志願者を断ってきたそうです。
おじいちゃんと色々お話していたら、急に現実に返ってきた感じになってしまい、気が付くとそれまでの熱意が少しずつ落ち着いてきたんです。
一度の訪問で諦められるなら、元々そのぐらいの心意気だったのだなと思います。
おじいちゃんと和傘の話以外に骨董の話などもしたと思います。
和傘の制作を見学したいと申し出たら、2階の作業場に案内してくれました。
「教えることはできないけれど、見るだけなら良いよ」と。
「弟子はとらないし教えることもしない。けど、見学はいつでも自由にどうぞ。勝手に覚えるぶんには構わない。」と言いました。
(↑今思えば、これはとても愛のある言葉でした。)
私と同じように弟子入り志願にきたオジサンで、やはり弟子入りを断られたそうですが、何度も足を運んで和傘の制作風景を見学していくのだと言っていました。
(えらいなぁ、根性あるんだなぁと思って聞いていました)
どのくらいの時間を見学していたでしょうか。
とくに会話するでもなく、和傘作りの音だけがする空間にしばらく滞在しました。
『途中からの様子を見てもわからんなぁ、何度か来て最初の工程から見ないとわからん。』(←心の声)
何度も足を運んで全行程見ることが出来たら見様見真似で作れるようになるのかな、と思いながら、お礼を言い「また来ます」と伝えて帰りました。
また行こうと思いながら、結局あれきり行かずじまい・・・。
思い付きで動き、一度の説得で諦め、「また来ます」を果たさず・・・。
これを若かったせいにするのはよくないことはわかっていますが、でもやっぱり考えが若かったんだと思います。
何度も足を運び見学しているとうオジサンは真剣におじいちゃんから学びたいとちゃんと行動できていたと思います。
オジサンはおじいちゃんの技を習得できたのかしら・・・。
おじいちゃんはいつまで青梅傘を作っていたのかしら・・・。
その後私は、ずっと進路を決めないまま、進路が早く決まった友達といつまでも遊び呆け、冬になってから徐々に焦りだし、ギリギリ滑り込むように進学をしましたw
たまぁ~に思い出しては、自分の中途半端さに情けなさを感じる、青梅傘職人のおじいちゃんのお話でした。